ジャケ買いの現場

CAN

カン エーゲ・バミヤージ

Ege Bamyasi 1972

カンは主に70年代に活動したドイツのバンド。ひと昔前まではプログレッシブ・ロックに範疇分けされていたが、楽器担当のメンバーは現代音楽やフリージャズを経由してきた人達で、様々な要素を取り入れた雑食性でノンジャンルのロックを演奏する。また、バンド最盛期のボーカルは、初代のマルコム・ムーニがアフリカ系米国人、2代目のダモ鈴木は日本人で、この異邦人たちの熱病にうなされているような歌い方が、呪術的といわれるカン・サウンドの特徴のひとつにもなっている。

『エーゲ・バミヤージ』はダモ鈴木在籍時の作品で、前作の『タゴマゴ』、次作の『フューチャー・デイズ』と並ぶカン最盛期のアルバム。曲の冒頭30秒で「こりゃ〜かっこええわ!」と一瞬でノックアウトされる。細かいフレーズで執拗に反復するリズム、うわごとのようなボーカル、そしてノイズのように被さるギターとキーボートによって、この時期のこのバンドにしか作れない異様な音空間が体験できる。
「今までになかった新しい音楽をつくる」とセリフで言うのは簡単だが、実際に創造(破壊でなく)するのはたやすくない。カンはそれを実現してみせた数少ないバンドのひとつであり、それが何よりあらゆる世代から幅広く支持され続けている理由のひとつなのだろう。

ちなみに、こういうバンドなので、まことしやかに語られる変なエピソードがいろいろある。初代のボーカリストは発狂しただの(マルコム・ムーニが精神的に衰弱しバンドを離れたのは事実らしい)、街で叫んでいた男をメンバーが連れて帰ってバンドに入れたのがダモ鈴木だっただの(実際はストリートパフォーマンス中にスカウトされたらしい)、そのダモは録音中のスタジオから奇声をあげて走り去り消えてしまった(これはムーニ説もあり)などなど。ま、どれも普通のロックバンドからは出てこないような話だから、こういうのもカンの特徴の一面を表しているかも知れない。

写真の「缶」は当時実際にあったトルコ製のオクラの缶詰らしい。実物の缶があれば部屋に飾っておきたいなぁ、と、このジャケットを見るたびに思う。


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